騒音規制の変遷

日々の出来事

少し前から車検含めた諸整備で預かってるドカティの900MHRですが、いよいよ車検に行ける段階になりました。

店内スペースは少し余裕出来ましたけど、台数減る代わりに重整備が増えたような…

ただね、このMHRですがメチャクチャ爆音なんですよ。

とはいえ実は生産年が1986年以前のバイクなので、実質的には音量規制はありません。

…いや、あるにはあるんです。
定常騒音で74dbとか(だったかな?)

ただ、近接排気音と違い検査場で測定ができないので基本的には「近くで聞いてレーサーみたいな爆音じゃ無ければ定常騒音クリアしてんじゃね?」という感じで検査員も気にしてない感じでした。

とはいえこのMHR。さすがに入庫時の音量だと検査員にケンカ売ってんのかってくらいうるさいので消音処置は必要です。
なにより、整備するうえで店内でエンジンかけたら上の階の事務所からクレーム来そうですし。
一応、店の開業時の内装は自分達で金かけないでやりましたが、一番お金かけたのは天井の消音ボードでした。
ケチケチ内装を業者使わず自分でやってるくせに、天井ボードだけは音楽室とかで使ってるようなボード入れたのも、バイク屋やるうえで近隣への騒音クレームを出したくないからってのもありまして。
コンプレッサーもバイク屋としては小さいサイズ使ってますが、音で選んだようなところありますしね。

で…バイクのマフラーの規制ですが、まぁ実際マニュアル見ると細かく色々書いてありますけど現場の車検場でユーザー車検通したいとかバイク屋が現実的に気にするべき事はそんなに多くないです。ほとんどはメーカーとかマフラーメーカーの仕事なので。

そんなわけで今日はマフラー音量規制のお話しです。

とはいえ細かい話は長くなるので要点だけ簡潔に書くと

〇1986年~2000年に製造されたバイク  近接99db

〇2001年以降 近接94db +排出ガス規制(1999年~)

排出ガス規制が入る事で社外マフラーには場合によっては「排出ガス検査レポート(ガスレポ)」が必要になります。
ガスレポ提示が必要なケースとしては

・1999年以降の排ガス規制対象車
・触媒を内蔵してる純正マフラーを交換してる場合

これはスリップオンなどで純正触媒を残してある状態ならガスレポは不要ですが、逆に提示対象車両は実際に検査コースで排気ガス検査が合格しててもガスレポが無い場合は車検通りません。

あと国内モデルと逆輸入車なんかで起こりえるのが、ガスレポ記載のエンジン型式や車両型式と車検証記載のそれが一致してないケース。
仕様地の違いで型式違う場合が多いので。

〇2010年以降

社外マフラーが型式認定受ける際に加速騒音試験が追加。

社外マフラーメーカーがマフラーに貼るJMCAプレートの色で規制の対象年がわかりますが、ユーザー側には特に何もできる事はないですな。
まぁ旧規制のJMCAプレート付いたマフラーを流用で装着したりすると引っかかりますが、レアケースでしょう。
脱着式のエンドバッフルも禁止されました。

〇2014年4月~

ちょっと誤解ある書き方しますが「近接排気騒音規制→廃止」になりました。
加速騒音のみです。

これは日本だけ厳しかったのを国際基準に近づけた実質的な緩和ですな。

…て書くと「うそこけ!今でも車検場で近接計測されるぞ!」と言われるかもしれません。
実際に計測されます。

ただ、正確には「加速騒音の測定方法の手段」として近接計ってます。

要するに加速騒音って実際に車検場じゃ計測できないんです。
なのでメーカーが新型車を開発して国土交通省から型式認定を貰う為に試験をする際に、加速騒音で合格を貰います。
その時の「近接騒音」も計測しておく。この数値は何dbでもOK(実際には加速パスする為には近接も相応に消音されてるでしょうが)

これが「この車種の規定値」になるので、車検で近接音量がその数値と大差なければ「加速もOKだよね」という理論です。

しかも経年劣化考慮で±で5dbだか猶予がある。

なので、それまでは「94db」とか「99db」とか全車統一で生産年で決まってた規制値が車種ごとに違うという事になります。

この規制のJMCAプレートだと従来の楕円形じゃなく銀色で四角いプレートになってますな。

これとは別に並行して「排出ガスの規制」もあります。

ただ、これ書くと長くなるし、実際にはキャブレターが廃止されFI化した現在では、まぁ排ガスでどうしようもなくて車検落ちるってのも皆無です。明らかにエンジン不調とかプラグ古いとかエアクリ汚れてるとかで数値が上がるのは有りますし、キャブ車は結構ガスで落ちたりする事ありましたけど。

数字で見ると「99dbが94dbって大して厳しくなってないんじゃない?」と感じそうですが、デシベルって単位がちょっと特殊ですからね。

実際に94と99を聴き比べるとわかりますが、体感でテレビのリモコンでボリューム数値を5増やしてもそれほど違いはないですが、デシベルでは倍くらい違います。
なのでバイク屋の人間ならエンジンかけた瞬間に大体OKかNGかわかるレベルで違います。

日本の騒音規制は世界一厳しいんですが、それはその昔にバイクが爆音撒き散らして走ってた時代に大量の騒音クレームが来たからですな。
自分らの親父世代が若い頃に夜な夜な暴走族として走り回ってたツケみたいなもんです。

メーカーもこれじゃいかんと社会イメージを回復する為に色々やりました。
JMCAを設立して公認制度を作り、メーカーのディーラーが違法改造を締め出す。
長年のこういう地道な回復によって2014年の実質緩和が認められたわけですな。

あと、意外と重要な事なんですが2016年以降は仮に公道走行中に白バイや警官に止められた際に、マフラーが違法でない事を証明できないと切符切られる可能性が高いです。
まぁそういう法改正がされてるんですな。

正直、今までは爆音でも警官が警察署まで車両を誘導して実計測しないと切符切れなかったんですが、現代はそれが「使用者が現場で合法マフラーであることを証明する義務」が明文化されてます。
現場で証明できないと切符切れますと。

なので比較的新しい規制対象の車両でJMCAプレートの無いマフラー装着してる人は要注意です。
ちなみにこれ、装着したバイク屋も罰則有るので、当然ながら国土交通省の認証工場の当店でも取り付け作業はNGです。
とはいえ、お客さん自身がマフラー交換しちゃうのは店からは何も強制はできないし通報義務もないので「違法なんで気を付けてください」くらいしか言えないんですけど。

まぁ規制の歴史とか行政のお話しは次にネタが無い時に続きを書くかもしれません。

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