ギブアップ車両の引き揚げ

作業日誌

最近立て続けに似たような経緯の車両が入庫しました。

マジェスティ250Cのご相談で個人売買で買ったけどセルモーターが動かないので自分で直そうとトライし、どうにもならなくなり当店に相談に来たお客さん。
車両引き上げの時は夜だったので、よく見ずに積み込んで帰ったのですが、翌朝よくよく見てみたら外装がほとんどネジで止まってない。というか明らかにボルトやネジが足りない。
カウルの爪やナット付きクランプのはまるベロも全部折れてなくなってる。どこで止めれば良いのか…
配線はギボシや端子で結線しておらず剥き出した銅線をそのまま巻きつけてるような状態。
シートBOXは謎の穴が開いててキャブレターが丸見え。まぁアイドル調整やキャブの脱着には便利かもしれないけど、これBOXとしての機能を既に失ってる…
挙句にマフラーはサイレンサーの部分が欠落してて、ほとんど直感みたいな…

さすがに個人売買とはいえ他の人に売るには状態があまりにもひどい。

全部まともに直そうとすると外装も交換になるし、お客様と相談の結果「とりあえずセルが動いて走れればいい」とのこと。

当店は一応は認証工場なので、明らかに音量規制アウトのマフラーなどは適法状態にしたうえでないと返せないのですが…

本当なら外装全部剥がして全部チェックして配線も全部直したいところですが、いくらかかるかわかりませんし、予算も限られてるので「走れる状態で適法」という最低限の状態まで直してお返ししましたが…

その翌日、こっちはよくあるケースというか、YSR80ですがオイル漏れてるので自分でクラッチカバー外してバラしてみたけど、組み直したらキックが蹴れなくなってしまい、当店に電話いただいたという車両。

ネットに掲載してる当店のアフターサービス問い合わせからのメールでした。
引き揚げに伺おうと住所を聞いたら自分の実家から歩いて行けるくらいの場所でした。まさかの実家ご近所さん。

とりあえずバラしてみましょう。そこで必要な部品などが出れば発注して部品待ちでしょうか。

これだと見ずらいですが、オイルポンプのカバー外したら2ストオイルがドバっと出て来たんですよ。
もしかしてポンプとケースの間のガスケットから漏れてたりしない?
というかオイル漏れてたのってここでは?という疑惑も。

続いてクラッチカバーを外します。

クラッチのボスにはクラッチスプリング止めるボルトが刺さるんですが、ボルト折れて先端がボスに折れ込んでます。
クラッチスプリング3個しか止まって無かった状態ですな。

とりあえずハウジングも全部外して潰れたネジや折れたボルトやボスやガスケット類を発注して、ひとまず部品待ちです。

当店プライムガレージでは、基本的にやれる作業は何でも受けますが、ショップさんによってはオーナーさんが途中でギブアップした車両の組み直しなんかは嫌がるショップも多いです。
途中まで他の人がやった作業を引き継ぐのって整備士側からすると原則「全部見直す」という前提になるんですな。

マジェスティのお客さんも「セルモーターは交換した」と伺ってましたが、普段から知ってる同僚整備士とかならどんな作業をどんな精度でやるか知ってるのですが、知らない人の場合「そもそもちゃんとできてるのかな?」という疑惑が拭えないので結局自分の目で確認する作業が入るのです。
なので途中まで自分でやったのに結局は最初からショップに任せた方が速くて費用も大差なかった…なんてことも起こります。

とはいえ自分のバイクを自分でイジってみたい気持ちはすごーくよく分かるし、自分もこの業界に入る前に通って来た道でもあるので、その意気を買いたいくらいの気持ちはあるのですが。

今回のマジェスティやYSRはまだマシですが、若い頃に居たショップで一度、オーナーさんが腰上まで全バラにしたV-MAXを組めなくなり途中で「あとは任せた」と外したボルトやカムシャフトやシリンダーヘッド全部ダンボールに詰めた状態で引き上げた事がありました(笑)
バルブも全部ひとまとめに袋に入れられてて「いや…これどれがどの気筒のインテークなのかエキゾースト側なのか…」みたいな。
まぁ全部バルブ新品に換えてバルブシートカットするなら関係ないんですが。

好奇心でトライするのは有りですが、リスクもあるので慎重に。

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